「こんにちは。はじめまして。アミバです。敬称付けてアミバ様って呼んでね。
今日は帝国陸軍の主力中戦車、三式中戦車をご紹介したいと思います。」


 




三式中戦車チヌ




 

「え?チハはどうしたって?・・・・・何のことですか?
誇り高い帝国陸軍にはそんなゴミクズのような戦闘車両は存在しません。みんな左翼の作ったフィクションです。」
「だってそうでしょう?軽戦車にボコられる中戦車なんて常識的に考えて存在するわけないでしょう?
連中の手口はなんて汚いんでしょうね。大日本帝国の誇りを傷つけようと必死なのです。
チハとか言う戦車が捏造の産物である事に異論をはさむ人はいないでしょう。」
「では三式中戦車のすばらしいスペックを概括してみましょう。まずは砲威力のM4中戦車との比較からです。」
「おっと、その前に初心者の皆さんのために戦車砲の砲威力と初速の関係についてご説明しておきましょうか。
いわゆる砲の装甲貫通力というのは砲弾重量が一定ならば、砲弾の速度が大きいほど大きくなるものなのです。
つまり、同一口径ならば速い砲が強い。この観点から日米双方の戦車の砲の初速を比べてみましょう。」





砲の口径 砲弾の初速
日本:三式中戦車チヌ 75mm 668m/s
米国:M4シャーマン中戦車 75mm 610m/s





「何ということだろう!三式中戦車のほうが砲弾の初速が大きいではありませんか!」
「この事実は日本の中戦車の攻撃力がアメリカのそれを凌駕していたということを意味します。
どこかの日協組に洗脳された電波な姫様は旧軍の砲開発能力は最低で、目も当てられなかった、などとのたまわっていのは完全にウソであったということが読者の皆様にもご理解いただけたかと思います。」
「次に装甲防御力のM4との比較です。下の表は車体前面装甲厚です。」




車体前面装甲厚
日本:三式中戦車 50mm
米国:M4シャーマン中戦車 51mm




誰でしょうね?日本戦車はブリキの棺桶だなんて言ったのは。
日本戦車の装甲厚は米軍の主力戦車と大差ないのが実情なのですよ?」
「防御力が同等であれば、攻撃力の大きいほうが勝利するのは自明の理です。つまり、
日本の中戦車はアメリカの中戦車よりも強かったと結論づけられるわけです。フフッ」
「最近、反日朝鮮人を中心として旧日本軍の優秀な兵器群を不当に卑しめようとする不穏な動きがあるようですからね。読者のみなさんは彼等の言う事など信じてはいけませんよ?
いいですか?日本の戦車開発能力は決して諸外国に比べて劣ってなどいなかったのです。
いや、それどころか数段優れていた。これでもう、自虐史観に陥る必要はありませんね。
我等が憎きチョンの策謀に負けるわけにはいか・・・・・・・・」









「・・・・・・・・・・・・・」


!!
「・・・・・・・や、やあこれは殿下。今日はお日柄もよろしゅう・・・・・」
「何やってんですか?」
「い、いやこれにはやむにやまれぬ事情が・・・・」
「どんな事情です?実戦にすら参加していない大戦末期に生産された戦車の一体どこが帝国陸軍の主力中戦車なんですか?」
・・・・・・・・・・・・・で、でも60台も作られたし・・・・
「それにチハちゃんが左翼の捏造だなんて酷いじゃないですか。ちょっと前まであんなにマンセーしていたのに。」
ウ、ウワアアアアアアアアアアアン!! だって悲しすぎるじゃないか!俺だって本当はチハタンばんじゃいしたいのに、チハは前線に出れば正に破壊されるためだけに存在するかのごとき単なるブリキの標的!いうなれば米軍兵の玩具じゃないか!やむにいたたまれなかったんだあ!!
「・・・・・そこで悲しみの絶頂にあった俺の前にふと現れたのが、このチハの魂が乗り移ったかのごときフォルムをもった長砲身の三式中戦車だった。」
「三式の車体はチハを一回り大きくしただけな様なかんじですね。換言すれば進歩が無い。
「そこで、俺は直感した。三式中戦車はチハタンの生まれ変わりなのだと。」
「・・・・・・・」
本土決戦が起こっていれば三式中戦車はチハタンを面白半分になぶり殺しにした米軍戦車どもを木っ端微塵に粉砕していたはずだったのだ。いいや、間違いなく逆襲していた。
「だからって戦史にifをもちだすのは間違いだと言ってるでしょうが。」
フハハハ!チハもとい、無敵のチヌタンばんじゃあああああああああい
「・・・・・それにしてもなんで三式中戦車と比べてあるのが初期型シャーマンなんですか?」
「・・・・・・・・・何の事だ?」
「日本本土決戦で会敵するとするならば、シャーマンは76.2mmで、場合によっては重戦車のパーシングでしょ?」
「・・・・・・・・」
「大体、大戦末期の75mmクラスでこの低威力は何かの冗談ですか?」
「ちょ、ちょっとまって!同時代のを比べちゃだめええええええ!」




大戦中期以降の各国の75mmクラス戦車砲の装甲貫通力(単位:mm 装甲傾斜角0度)

100m 200m 300m 400m 500m 600m 700m 800m 900m 1.0km 1.1km 1.2km 1.3km 1.4km 1.5km 1.6km 1.7km 1.8km
日:三式75mm 80 79 77 76 74 73 71 70 68 67 65 64 62 61 59 58 56 55
独:kwk42 75mm 180 176 172 168 164 160 155 151 147 143 139 135 131 127 123 119 114 110
 同高速徹甲弾 250 244 237 231 224 218 211 205 198 192 185 179 172 166 159 153 146 140
英:17ポンド 160 157 155 152 149 147 144 141 138 136 133 130 128 125 122 120 117 114
 同特殊徹甲弾 260 256 252 248 244 241 237 233 229 225 221 217 213 209 205 202 198 194
米:M1 76mm 130 128 126 124 122 120 118 116 114 112 110 108 106 104 102 100 98 96
 同高速徹甲弾 230 224 219 213 208 202 196 191 185 180 174 169 163 157 152 146 141 135





キャアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
「通常の徹甲弾だけとっても、末期に至ってドイツやイギリスの半分以下の装甲貫通力ですか・・・・・チハ改の主砲の47mmが、ドイツの37mm相当だったのに対して、三式中戦車の75mmはドイツの50mmよりも遥かに低いとはもはや戦争になりませんよ?」
「ちなみに大戦末期の三式中戦車と大戦初期に開発されたM4の75mm戦車砲の実際の装甲貫通力です。」





100m 200m 300m 400m 500m 600m 700m 800m 900m 1000m 1100m 1200m 1300m 1400m 1500m 1600m 1700m 1800m
三式中戦車 80 79 77 76 74 73 71 70 68 67 65 64 62 61 59 58 56 55
75mmシャーマン 100 98 96 95 93 91 89 87 86 84 82 80 79 77 75 73 71 70
同高速徹甲弾 130 126 122 118 114 111 107 103 99 95 91 87 83 79 75 72 68 64





 

「あ、あれ?初速は三式のほうが大きいのに・・・・・・」
「カタログスペックだけが良くても砲弾の性能がどうしようもないですから。」
「・・・・・・・・・・じつは日本の戦車砲にも特殊砲弾が存在して、装甲貫通力が200mmだった、とかいうことはないのか?」
あるわけありません。日本の戦車砲の装甲貫通力がかくも低い理由は、冶金技術が低すぎて着弾しても弾頭が砕け散ってしまうからと以前言いましたよね?それに日本の砲弾はよく滑って弾かれてしまうということもあるんです。でもこれらは砲弾に軟鉄のキャップを被せるだけでも簡単に回避できるレベルの問題なんです。海軍は知っていたそうですが、いわゆる被帽付徹甲弾とかいうやつです。その程度の砲弾開発力すらも無かったのに何がAPCRやAPDS弾ですか?日本の兵器開発の進歩というのは外国からの援助がなくなった時点で終了してしまうのが常なんです。日本が国際的に孤立した時点では特殊砲弾はまだ存在していなかった。ただそれだけの事です。」
「フッ・・・・フフフフフフフフフフ・・・・・・・」
「なんですか・・・・・・ついに壊れたんですか?」
「しかし!しかしだ!大戦末期の砲とはいえ、ほんの一時期だけでも大国アメリカの初期の戦車砲の初速に近づけた事は偉大な功績だとはいえないかね?実際、三式中戦車の主砲の初速は75mmクラスの砲の世界標準に近い値となっている!」
「どんどん考え方が卑屈になっていく・・・・・」
「砲弾がどうしようもないのは確かに残念な問題だ。しかし、三式中戦車の主砲の初速は速い!この高初速砲を開発できた事実は日本の兵器開発史のなかでも異色の輝きを放っている。このことを日本人は誇りに思うべきだ。
「・・・・・そんな下らない問題でよく誇りなんて言葉を持ち出せますね。」
「ところで、賢明な読者の皆さんは何か不自然だと感じはしませんか?三式中戦車の主砲と、この75mmM4の主砲はほぼ同口径同砲身長なので比較対照として最適なんです。それで、いくら大戦末期の砲だとしてもですよ?APC弾すら開発できなかった帝国陸軍の戦車砲が、たとえ初期のものにであったとしても、アメリカのそれの初速を上回ったなんて話は少しでき過ぎてるような気がしませんか?」
「・・・・・なんて悪意のある発想・・・・ちなみに俺が先に提示した戦車砲の初速は捏造なんかではないぞ。」
これは事実なのだ!日本の科学は他の列強に比しても劣ってなどいなかった!!
チハは何かの間違いだ。
「・・・・・どうでもいいですけど、ちょっとこれをご覧になってみてください。
両者の戦車砲の砲弾の薬きょうの容積なんですけども・・・・」



薬莢の体積
日本:75mmL38 3067cm3
米国:75mmL40 2026cm3



「日本のほうがかなり大きいな。」
「そうです。そしてこれは砲弾の重量です。」



砲弾の重量
日本:75mmL38 6.6kg
米国:75mmL40 6.8kg



「?日本の方が軽い。
これカタログスペックの初速だけ世界標準にするためにわざと弾丸の重量を減らしてあるんです。
「は?どういうこと?」
「つまり開発の経緯はこうです。旧日本軍の兵器開発というのは、官僚的にまず満たすべきスペックが先に決定されるんです。当然、自国の基礎技術の水準なんてあまり分かっていない役人達は、世界の一般的な水準の兵器の開発計画を立ち上げてしまいます。すると、兵器の開発陣はそのスペックを満たしたものを作らなくてはいけなくなる。たとえ量産はおろか、製作が不可能だとしてもですよ。」
「困った技術者達は仕方なく試作をしてみますが、満たすべきスペックには到底届かない。すると、上官に怒鳴られます。
『所定の性能に達さないのはお前達の根性が足らんからだ!』
場合によっては暴力が待っています。こういうやりとりはゼロ戦のエンジンが予定出力に達さなかったときにもあったそうです。」
「戦慄を覚えた技術者達は最後に普通はやってはいけないことに手を出してしまうというわけです。たとえ砲の性能が悪くなるだけだとわかっていても、砲弾の重量などを減らして砲弾の初速だけを上げたんです。」
「・・・・・でも他国も砲弾重量を減らして性能アップしたりしてなかったか?」
「それは日本のこの場合とは全く別の技術です。砲弾の装甲貫通力は速度の二乗に比例し、質量に比例して増大 しますから、一般的な国では砲の威力を手っ取り早く上げるために砲弾重量を削減する事で実現しようとする・・・・・いわゆるHVAP(高速徹甲弾)というやつがありますが、場合は戦前の日本です。
まさか硬い弾頭を作れないのに、炸薬量を減らして高速徹甲弾のつもり!とかいってもギャグにしか聞こえません。ですから日本の冶金技術を鑑みれば無理して速度を上げるより、弾頭重量を増やして質量効果を狙ったほうが合理的であったのに、減らしてしまったことでチハ改の主砲である47mmと比べて75mmにも口径が増えたはずなのに装甲貫通力はたった20mmしか増えなかったのです。」
「戦前の日本の兵器のカタログスペックというものがおよそ、当てにならないということが良くおわかりになられたと思います。当時の日本の兵器のカタログ上の数値やスペックは他国のものと比べても、必ずしも悪いものじゃないんですね。でも常識的に言って、あまりそういうことは考えられないはずでしょう?なぜならそのころの日本の主産業は絹と綿花の加工であって、アメリカへの綿糸の見返りに工作機械と石油を輸入して、東アジア向けに簡単な機械類を輸出する、というものだったからです。日本は植民地ではありませんでしたが、近代化してから日の浅い発展途上国でした。したがって産業構造から言って、兵器の性能がアメリカ以上にはなりえないのです。
戦前の日本の兵器の性能を比較しようとするときは、つねに単に数値などの単純な比較にとどまらずにもう一歩進んだ解釈が必要かもしれませんね。」

「ウウ・・・・・でも三式中戦車の巨大な砲塔を見てくれ!ティーガーUみたいで強そうじゃないか!」





キングタイガー?







「三式中戦車のむやみに大きい砲塔ですが、これは単にもともと大きかった九十式野砲改造のやっつけ仕事による結果でしょう。
しかしおそろしくバランスの悪い戦車ですね。240馬力のエンジンを付けたチハの拡大車体に無駄にでかい砲塔ですか・・・・機動性も最悪だったようですね。っていうか大戦末期に240馬力って涙ぐましいですわね。」
「ちなみに各国の中戦車の出力/重量比です。」




エンジン馬力 出力/重量比 最高速度
三式中戦車チヌ(日本) 240馬力 12.8 39km/h
5号戦車パンター(ドイツ) 700馬力 15.4 46km/h
T-34/85(ソ連) 512馬力 16.0 52km/h
M4A3(アメリカ) 450馬力 13.4 42km/h





「出力重量比はチハよりも多少改善されたものの、依然重戦車なみの低さですね。」
「・・・・・ちょっと待ってくれたまえ。今までの話はさしたる問題ではない。三式は防御力に自信があるんだ。
攻撃力や機動力の問題など相殺できるほどにな。三式中戦車は日本で初めて海上輸送能力の限界である15tを大きく上回った戦車だ。その最大装甲厚は50mmもの厚さで敵の主力戦車M4シャーマンに匹敵するほどの堅牢さであったことは前述した!繰り返し言おう。三式中戦車は装甲に関しては最強の部類の戦車だったのだ!」
「ですからそれは初期型シャーマンに対してでしょう?それにその初期型M4とでも車体前面装甲は同じくらいですが、M4は傾斜してますし、一番被弾確率の大きい砲塔前面は76mmで最大装甲厚は初期のM4のほうが多いですよ。」
「・・・・・」
「それではこれが三式中戦車と同時代のM4A3の最大装甲厚の比較です。」





砲塔前面 車体前面上部 車体前面下部
三式中戦車 50mm(傾斜角78度) 50mm(傾斜角72度)  50mm(傾斜角75度)
M4A3中戦車 86mm(傾斜角45度) 64mm(傾斜角43度) 107mm





「M4の64mm車体前面装甲は43度の傾斜角ですから、避弾径始を考慮すると90mm相当ですね。」
せめて夢をみさせてくれえええええええ!!
「大体、三式中戦車は装甲を垂直におっ立てたりしてティーガー気取りですか?」


ティーガー重戦車





「そんなに装甲厚くもないのに突然避弾径始無視した戦車作ったりして何やってんでしょうね。」
・・・・・チハタンよりは強力な装甲だと思います。
「それにそもそも三式中戦車の装甲厚を比較しても無意味な行為なんですよ。
なぜならこの戦車は装甲板ではなく軟鉄で製作されていますからね。
もう目も当てられない。」
ちょっとまったああああああああああ!!!!
司馬か?司馬なんだな?司馬遼太郎のヤスリの話の事だろう!
三式中戦車は表面硬化装甲ではなく均質圧延装甲版で出来ているんだぞ!」
「事情を知らない読者のために少しこの話の経緯をご説明しましょう。
大戦中、戦車兵だった司馬先生はある短編エッセーの中で、97式中戦車チハの装甲板にヤスリをかけても全く受け付けなかったのに対して、三式中戦車はヤスリで削れてしまい、なぜ我々は装甲板ではなく普通の鉄でできた戦車で戦わなくてはいけなけなかったのか、とか書いたことが波紋を呼びました。戦車の設計陣はこれに反論して、三式中戦車のような装甲の厚い(笑)戦車には弾力があってヤスリで削れるほど軟らかい均質圧延装甲板を用いており、チハなどの装甲の薄い戦車に用いられる表面硬化装甲板とは違うのだ、と。」
「ここで出てきた装甲板の説明をちょっとしますね。
表面硬化装甲とは炭素を添加し、砲弾が衝突する面の表層だけを焼きいれすることで硬くして、着弾した砲弾を砕いてしまうというもので、主に装甲の薄い戦車などに用いられます。チハがM3軽戦車を撃破出来なかった理由は、チハの砲弾がすべて砕けてしまったからでしたね。当然ヤスリでは削れません。
一方、均質圧延装甲というのは、炭素鋼に希少金属であるニッケルやクロムなどを添加して粘りをだし、今度は砲弾を受け止めるという目的のために作られた装甲板です。当然、この種類の装甲は原理から言って厚みのある戦車に用いられるため、三式中戦車にはこの装甲板が採用されていた、と彼らは主張するわけですね。」
「そう。それで司馬の主張が的を得ないものであったということは明白であろう。」
「ところで、均質圧延装甲板を作ろうとする場合、鉄(Fe)の次に多く必要な金属は戦略物資のニッケル(Ni)なんです。これは日本のニッケルの必要量に対する取得率の割合の変化なんですけれども・・・・」






ニッケルの必要量に対する取得率の推移

割合
1940年 60%
1941年 30%
1942年 20%
1943年 10%
1944年 10%









「三式中戦車が製作された44〜45年はニッケルの取得率が10%を下回っていたんです。
当然、航空機優先のご時世でしたから、試作車両を作るときにも材料が不足するぐらいだったといいます。
それで、均質圧延装甲の反論の後、今度は製作にかかわった人達から三式中戦車は材料不足で普通の鉄を使用した、という再反論がなされてこの論争は決着がついてしまいました。
間違いありません。
この旧日本軍最後の戦車はフライパンと同じ、軟鉄で作られました。
「しょ・・・・・しょんな・・・・・・ふらいぱん?」
「資源不足はどうしようもない問題ですが、同様に資源不足に悩まされたドイツではニッケルを一切使わない装甲板製作法として、高周波表面硬化法を発明し、これによって装甲板の資源不足の一部を解消しました。ドイツにも資源がありませんでしたが、科学はありました。ドイツのMe262用のジェットエンジンは耐熱合金の不足から24時間ぐらいで使用不能になってしまったそうです。いずれにしても資源のない枢軸陣営は悲惨ということですね。」





Me262ジェット戦闘機








「では次に、第二次大戦における、各国の最強と言われる戦車群を総括してみましょう。」






主砲の装甲貫通力(mm)

主砲 100m 500m 1000m 1500m 2000m 2500m 3000m
三式中戦車(日本) 75mm L38 80mm 74mm 67mm 59mm - - -
Y号戦車ティーガーU(ドイツ) 88mm L71 300mm 276mm 245mm 215mm 184mm 154mm 123mm
JS2重戦車(ソ連) 122mm L43 200mm 200mm 200mm 200mm 200mm 200mm 200mm
M26パーシング(アメリカ) 90mm L52.5 270mm 249mm 222mm 196mm 169mm 143mm -




最大装甲 重量 エンジン馬力 最大速力 製作台数
三式中戦車(日本) 50mm軟鉄(笑) 18.8トン 240馬力 39km/h 60両
Y号戦車ティーガーU(ドイツ) 180mm 68 トン 700馬力 38km/h 489両
JS2重戦車(ソ連) 160mm 46 トン 520馬力 37km/h 3,500両
M26パーシング(アメリカ) 102mm 41.9トン 500馬力 48km/h 1,436両










三式中戦車チヌ







ティーガーU







M26パーシング







JS2










「不・・・不公平だ。三式中戦車以外はみんな重戦車だ。日本の重戦車といえば、ここは一つ100t重戦車を・・・・・」
「どんどんファンタジーの世界が広がりますね。そんなまともな形にすらなっていない戦車なんて比較の対象にすらなりません。
大体三式中戦車にしても上にあげた戦車群の中で唯一実戦経験がなくて、生産台数も極端に少ないですからね。
別にドイツのマウスと比べても・・・」

「あら、間違えました。いえ、間違えてませんけど。






超重戦車マウス(独)

「こっちですね。・・・べつにマウスやJS3と比べたってよさそうなものですね。」
「・・・・なんですか?コレ・・・・・」
「ハイブリッド駆動の超重戦車マウスです。重量は188トン。45年にソ連軍と交戦したとも伝えられています。」



「・・・・・・・・・・虎Uやマウスのことはどうでもいいが、やっぱり本土決戦が起こっていれば三式中戦車はそれなりに活躍したんじゃないか?事実、チハよりはほんのちょっとだけ強いし、日本戦車兵は不屈の闘志を備えている。工夫次第でどうにでもなりそうなものだ。」
「戦車兵の心意気がどうであれ、なんせ軟鉄製の戦車ですからね・・・・・三式中戦車の前面装甲は50mmですが、側面は25mmでチハの前面と一緒なんです。たぶん側面はまた小銃弾貫通の憂き目に会うでしょうね。なんせ軟鉄ですから。もちろん戦車砲なんて受け止められるはずないでしょう。チハの場合とちっとも状況が変わっていませんね。」
「結局、本土決戦が勃発していたなら、一番米軍戦車に損害を与えたのは戦車や対戦車砲ではなく、爆弾抱えた女学生だったでしょうね。」
「うわあああ・・・・中東とおんなじだ・・・・・・・・」
「ところで、爆弾かかえて自爆攻撃って第二次大戦で日本以外にもどこだったかがやってませんでしたっけ?
・・・・・あれはどこだったかしら・・・・・日本と同じく人権の無い国だったと思うけど――――――そう、たしかソ連・・・・・」









戦車の下に入り込むよう訓練された爆弾犬





「ソ連の爆弾犬です。ヒトじゃなくてイヌでしたね。」
「姫様は当時の日本人の尊厳は犬以下だったといいたいんですか。そーですか。」
「もうやむ終えん。対戦車戦闘を爆装した老人や女学生に任せるぐらいなら日本戦車は旋回砲塔を諦めて、ヘッツァーをライセンス生産するべきだったな。」





駆逐戦車ヘッツァー(独) 総生産数2,827両





「・・・・・・ヘッツァーが作りたいのはいいのですが、装甲は無視したとしてもはどうするんです?主砲だけドイツから輸入でもしない限りはチハと同レベルの物しかできませんよ。」
「じゃ・・・・じゃあどうすればよかったんだ?どうすれば米軍戦車に勝つことが出来たんだ?」
「・・・・もちろん空想の中の話ですからこんなこと言いますけど、やっぱり一番効果的な対戦車戦闘法を模索するとすれば、一般の住民を脅して自爆攻撃させることでしょうね。そして歩兵も戦車や突撃砲など装備しないで、ふとん爆弾持ってゲリラ戦です。どうせ旧日本軍は最初から正面きって敵と交戦することはありませんでしたから、それが最良だったと思います。といいますか、現代でも実際戦前の日本みたいに人間の尊厳が低い第三世界の国々ではこの方法で強大な敵に対して成功を収めています。」
「でも戦車には戦車を投入するのが一番効果的な方法なはずだ!っていうか後世の軍オタのためにも
何とかマトモな戦車をつくるべきだ!」
「ふぅ。・・・まだ分からないんですか?
結論から言いますと、普段は作ってる日本人たちに突然強い戦車作れなんて言っても絶対ムリだったんですよ。
この問題はどうしようもありません。無理なものは無理です。たとえ、今流行りの仮想戦記なんかで細かい工夫や資源の獲得があったとか仮定してみても、日本が当時の日本であるかぎりはすべて無意味な妄想以上にはならないんです。高性能な主砲が開発できない。硬い砲弾が作れない。小型で高出力な内燃機関が作れない。なにより、部品を作るためには外国製の工作機械を使わざるを得ない。資源や物量の有無なんてほとんど関係がありません。」
う・・うわらば・・・・・
「 戦時中の日本で巷に流布されたスローガンの中に、
『ほふれ英米我らの敵 進め一億火の玉だ』というものがありました。
これを見たある人はこの文をもじって、
『むかし英米我らの師 困る億兆火の車』
とか書いた張り紙を路傍の共同便所内に貼り付けたといいます。第二次大戦における、イデオロギーを抜きにした日本の実際の戦争というものはおよそ、この言葉に要約されるといってよいでしょう。」


「最後に日本戦車に対するアメリカ調査団の報告書を転載しておきましょうね。」







「日米の戦車を比較すると、フォードA型(20世紀初頭の初の量産車)と最新のキャデラックほどの違いがある。
前車はたしかに自動車に必要な機能は備えている。しかし、後者に比べて決定的に旧式であり、性能が不足している。
特に注目すべき技術的特徴は、見当たらない。」











「フッ・・・あれだ。結局チハタンたちは戦争の道具というよりも平和の使者だったのだと言えよう。」








〜fin〜


もう一つの陸軍兵器史―知られざる鹵獲兵器と同盟軍の実態
藤田 昌雄 (著)
日本陸軍最強の戦車・・・・それは鹵獲したアメリカ製M3


ジャーマンタンクス
ピーター・チェンバレン, ヒラリー・L・ドイル, 富岡 吉勝
言わずと知れたありとあらゆるドイツの装甲車両を網羅した写真・資料集


日本陸軍便覧―米陸軍省テクニカル・マニュアル:1944.
米陸軍省, 菅原 完
戦時中、米軍が作成した日本軍兵器のテクニカル・マニュアル。


戦車メカニズム図鑑
上田 信 (著)
読むと戦車に詳しくなります


帝国陸軍戦車と砲戦車―欧米に比肩する日本の対戦車戦闘車両の全容  〈歴史群像〉太平洋戦史シリーズ (34)
学研編集部 (編さん)
欧米に比類したそうです・・・


ドイツ戦車発達史戦車ものしり大百科
斎木 伸生 (著)
ドイツの戦車はァァァァアア・・・・


黒騎士物語外伝SEBUNコミックス
小林源文 (著)
パンターが超カッコイイ戦争劇画。